医療少年院のタイムスケジュール

 

刑務所同様、少年院でも日々のタイムスケジュールが決まっている。

 

寝起きする時間から点呼、食事、プログラム、そして入浴やイベントなどがある。

 

規則正しい生活であることは確かで、おかげで私は1年で12キロ太った。

 

タバコを吸わなかったことも大きいが、栄養満点のご飯に規則正しい生活を送れば簡単に太れることが証明されたわけだ。

 

今日は医療少年院で、少年が生活しているタイムスケジュールをご紹介しよう。

 

タイムスケジュール自体は、刑務所も少年院も変わらない

 

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刑務所も同様であるが、逮捕後すぐに刑務所や少年院に入るわけではない。

 

  • 逮捕後、起訴されるまでは警察署にある「留置場」
  • 起訴後は「拘置所」少年の場合は「鑑別所」
  • 実刑判決が下ると刑務所や少年院に送致
  • 無罪や執行猶予判決の場合は、裁判後すぐに釈放

 

逮捕から起訴までを過ごす留置場は、まだ犯人かどうか確定していない「容疑者」の状態だ。

 

しかし、タイムスケジュールは留置場からスタートしている。

 

留置場から刑務所まで、寝起きする時間に大きな差はない。

 

基本的には6時から6時半の間に起床し、掃除や点呼、着替えに朝食を済ませる。

 

少々話が逸れるが、留置場、拘置所、鑑別所では、基本的に番号で管理される。

 

成人も少年も同様に、呼ばれるときも物の管理も全て、割り当てられた数字が適用される。

 

刑務所も同様に数字で管理されるが、少年院だけは名字で管理される。

 

もちろん数字も割り当てられるが、物の管理に使用されるくらいで、数字で呼ばれたり管理されることはほとんどない。

 

私は逮捕から少年院送致になるまで、およそ3ヶ月間を留置場と鑑別所で過ごした。

 

長い間、数字で呼ばれていると、久しぶりに家族などから名前を呼ばれたときジンときてしまうことがある。

 

刑務所も少年院も、肉体的な刑罰はほとんどない。

 

しかし、精神的な刑罰は確実に存在する。

 

私は割と軽いテイストでノートを書いていると思うが、実際には皆さんが想像する最悪の状況を優に超える環境である。

 

話を戻すと、タイムスケジュールは留置場から始まるため、少年院送致される頃には自然と6時に目が覚め、日付が変わる前には寝落ちできるようになっていた。

 

医療少年院のタイムスケジュール

 

以下が、医療少年院のタイムスケジュールである。

 

AM 6:30 起床(着替え、掃除、洗顔

 

(洗濯は夏季は週に3回、冬季は週に2回のため、洗濯物がある場合はこの時間にまとめて回収してもらう)

 

AM 7:00 点呼

 

(体調不良、問題がある場合は、この時点で先生に申し出ること)

 

AM 7:30 朝食

 

(基本的には集団で、問題が起こった場合は各自居室内にて)

 

AM 8:30 朝礼、ラジオ体操

 

(暴れている少年や問題がある場合は、各自居室内にてラジオ体操を行う)

 

AM 9:00 午前のプログラム開始

 

AM 11:30 午前のプログラム終了

 

PM 12:00 昼食

 

(基本的には集団で、問題が起こった場合は各自居室内にて)

 

PM 13:00 午後のプログラム開始

 

PM 16:00 午後のプログラム終了

 

PM 17:30 夕食

 

(基本的には集団で、問題が起こった場合は各自居室内にて)

 

PM 18:30 自由時間

 

(読書や自習、家族へ手紙を書く時間)

 

PM 20:00 テレビの時間

 

PM 21:00 就寝準備、点呼

 

PM 22:00 消灯

 

医療少年院のタイムスケジュールは恐ろしく変化する

 

以上が医療少年院のタイムスケジュールであるが、夏季には週に3回、冬季には週に2回の入浴がある。

 

入浴はプログラムの時間を利用して行われるため、基本的に入浴がある日のタイムスケジュールは、

 

午前入浴(時間が余ったら自習)または午後入浴(時間が余ったら自習)

 

のような感じである。

 

少年院なのに週に2回も3回もそんなにゆるくていいのか…と思うが、医療少年院は、入浴時に大人しくお風呂に入る少年ばかりではない。

 

暴れ出す少年や人の体を触ったり襲ったりする少年、時間を守らなかったりトラブルを起こしたりと、お風呂に入るだけのことすらスムーズにはいかない。

 

かといって、入浴の時間に職員を増やせるわけでもない。

 

職員数にも限度がある以上、問題が起こると全員で対応する必要がある。

 

そのため、医療少年院で入浴がある日はほとんど半休のような状態だった。

 

また、午前も午後も自習という場合がある。

 

そんな日は1日居室に閉じこもっているため、本気で気が狂いそうになる。

 

窓のない灰色一色の壁に、ベッドとテーブル、トイレと洗面台だけの4畳部屋を想像してほしい。

 

問題を起こす少年が続くと、その日全てのプログラムが中止となる。

 

それが楽しみにしていたプログラムやお菓子が出るイベントだった場合、ブーイングの嵐となり、それをきっかけにまた騒動を起こす少年が出てくる。

 

時期、季節、天気、女子の場合は生理周期によってトラブルが起こるため、「今日はなにもしてないな」と感じる日もあった。

 

プログラムは多々中止になっても、基本的にイベントが中止になることはない。

 

ボランティアを集って行われることが多いため、問題のある少年は部屋に閉じ込め、他の少年だけが参加する形で行われる。

 

しかし、参加途中で問題を起こす少年もいる。

 

奇声をあげたり、椅子を持って暴れたり、隣の少年に襲いかかったり、先生やボランティアに手を出したり、最もひどかったのはズボンを脱いでオナニーを始めた少年だった。

 

となるとイベントは即時中止、居室に戻される。

 

「せっかく楽しかったのに!」と、憤慨する少年が出てくるのもおかしいことではない。

 

そうなると映画鑑賞に変わり、お菓子が配られる。

 

健全な少年にとっては気休め程度で腹が立つが、病人に付き合うのも医療少年院送致された少年の運命といえるだろう。

 

医療少年院にはお坊さんが何十人も来て、供養をする会がある

 

私は医療少年院しか経験していないので、他の少年院も同様かは分かりかねるが、医療少年院では年に一度、供養の会が行われる。

 

イベントといっても全てが楽しいわけでもなく、供養の会では泣き声や嗚咽が聞こえた。

 

供養の会には近隣のお寺からお坊さんが何十人も来る。

 

御経を読み、儀式を行うのだが、宗教上参加できない少年は参加しなくていいというルールも設けられている。

 

仏教徒だけでなく、ムスリムにもキリスト教にも対応している。お祈りの時間が必要な少年には、それらの時間も確保されていた。)

 

供養の会では自分の家族や被害者に供養をし、亡くなった人の名前と少年の名前、そして関係性をお坊さんがお経の間に読み上げる。

 

基本的に「今年亡くなった人」を供養するのだが、入院中に両親や子どもを亡くしている少年も多かった。

 

泣き叫ぶ声をかき消すほど、お坊さんたちは大声で御経を読み上げていた。

 

その光景は異常そのもので、19歳の私には少々胃が痛くなる時間だった。

 

しかし、そんなときも構わず暴れる少年がいるのが医療少年院だ。

 

粛々とした雰囲気の中で過ごせた時間は一瞬たりともなく、私は日が経つごとに、先生に同情するばかりであった。

 

医療少年院には休日にもタイムスケジュールが存在する

 

刑務所も少年院も、休日はある。

 

基本的に公務員と同じなので、土日祝日とお盆や年末年始は休日となっている。

 

しかし、だからといって昼までウダウダ寝ていられるわけではない。

 

起きる時間に変わりはないし、寝る時間にも変わりはない。

 

点呼、朝食、昼食、夕食、点呼の流れ自体も変わらないので、休日といっても大して休み感を味わえるわけでもないのだ。

 

休日にだけ行われる特別なことといえば、テレビを見る時間が延長されることくらいだろうか。

 

平日は1時間なのに対し、休日は3時間もテレビを見ることができる。

 

だが、タイムリーに番組を観れるわけではない。先生がセレクトした番組を録画し、少年に見せても問題ないかを確認してから放送する。

 

そのため、火曜日放送の番組や木曜日の番組を土日に見ることも多かった。

 

日々の時事ネタは毎日回ってくる新聞から得るとして、それ以外の娯楽に関する情報をタイムリーにインプットすることはできなかった。

 

少年院や刑務所にいると普通に暮らすより遥かに健康でいられる

 

刑務所は特にそうだと思うが、罰を受けさせるのが目的のため、受刑者に死んでもらっては困る。

 

そのために規則正しい生活をし、健康診断をことあるごとに行なっているわけだが、少年院も同様だ。

 

最初に述べたように、私は1年間で12キロも太った。栄養士が考えた献立と規則正しい生活を送っていれば、風邪を引くことすらなかった。

 

少年院から出院してすぐに母とガストへ行き、久しぶりに外食をした。

 

確かミートソースパスタを食べたが、味の濃さとしょっぱさに驚いたのを覚えている。

 

今は警察にお世話になることもなく至極真っ当な顔をして生きているが、少年院にいた頃の方が遥かに健康だったのは確かだろう。

 

悪い部分ばかりスポットライトが当てられる犯罪者の行く末だが、刑務所や少年院に入ることは何もデメリットばかりではない。

 

更生の機会を社会が与えている以上、どんな人間にもやり直す機会はあるということだ。

 

戻りたいかと言われたら断固拒否だが、少年院での生活が社会人として「普通に」暮らすことのベースを教えてくれたのは紛れもない事実である。